先日、公益社団法人日本文藝家協会から、
「『引用』ってなに」
というタイトルの冊子が送られてきました。
あなたは引用の定義を調べる際に何を調べますか?
ネットで調べると、辞典やウイキペディア、或いは特定の個人が書いた文章が上位に出てきます。
「引用」のようにセンシティブな問題は、やはり最も信頼性のある情報源をたどらなくてはなりません。
これ、非常に重要です!
辞典では表面的なことしかわかりません。
そういう意味で、日本文藝家協会が発する情報は非常に信頼性が高いと言えます。
なぜなら、日本文藝家協会は文芸を職業とする者の職能団体として設立された公益社団法人で、文芸の著作権を管理する最大の団体だからです。
社団法人時代は文化庁が所管しており、 文芸家である会員と、著作権継承者である準会員によって構成されています。
私に対しては、著作権者として、著作権の支払い報告書や関連情報などが送られてきます。
さて、送られてきた冊子「『引用』ってなに」の内容ですが、56ページにわたって引用について語られています。
いかに理解や解釈が難しいものであるかがわかりますね。
まず、著作権法での規定は以下のとおりです。
(引用)
第32条
公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、
かつ、報道、批評、研究その他の引用の
目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。(出所の明示)
第48条
次の各号に掲げる場合には、
当該各号に規定する著作物の出所を、
その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、
明示しなければならない。
日本文藝家協会の「協会見解」として、「引用」が認められるための要件として、以下の5つの要件が示してあります。
⇒主従関係(引用が従)と明瞭区別性の2つが必要か?
2)引用される著作物は公表されたものに限られること
3)引用が「公正な慣行に合致する」こと
4)引用が「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」であること
5)第48条に定める「出所表示」を伴うこと
補足します。
1)の主従関係は、必ずしも量的な比較だけで判断されるものではなく、それぞれの体裁や内容を含め、総合的な比較、判断がなされます。
ただし、「明瞭区別性」と「主従関係」に関しては、最近の裁判例では、その言葉を使用することが少なくなり、「公正な慣行」に合致するか、「目的上正当な範囲内」と評価できるか、などを判断するものが多くなりました。
例えば「パロディ」は「明瞭区別性」と「主従関係」の要件を満たしません。
この点、「公正な慣行」と「目的上正当な範囲内」を判断するうえでも困難さにあまり変わりはありません。
従って、日本では現在までのところ、パロディについては、作者は著作権侵害とされるリスクを覚悟して、作品を創作せざるをえない状況です。
パロディの文化というものは表現の自由との関係もあり、いずれの国においても重要なものといえるため、今後日本文藝家協会として、継続的な研究が必要とのこと。
5)の出所明示は、次の内容です。
「著作者名を表示することを原則とし、場合によっては、作品名(書名)なども表示することが望ましい」
この点について、作品名、書名が明示されなければ、出所がわらないという批判があるが、短歌や俳句などで代表されるように、正確な出典を記載するのが難しい場合があるため、この表現になっています。
<歌詞の引用について>
日本文藝家協会と、日本音楽著作権協会(JASRAC)との間で結んだ覚え書きによれば、歌詞の一節以内であれば、自由に引用できるが、それを超えれば、JASRACが定めている使用料を支払うことになっている。
<「引用」と「参考文献」>
「引用」という場合には、原則として引用される著作物の「表現」をそのまま自分の著作物の中に取り込むことをいうので、その場合に、出所明示の必要がある。
これに対して、参考にしただけであれば、思想は借りたとしても、表現を借りているわけではないので、著作権法上の「引用」に該当しない。
<要約による引用>
著作権での保護の対象となる「著作物」とは、表現を保護するものであり、思想をのものを保護するものではない。
従って、他人の著作物からアイデアのみを拝借して自己の著作物に利用しても、著作権の侵害になることはないし、引用を問題にするまでもない。
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