まとめサイト問題でWeb業界がどう変わるか?




約6146文字 一般的完読時間 11分

2016年の年末からDeNA運営「WELQ」の問題を皮切りに、まとめ(キュレーション)サイトの非公開化が続きました。
私は長年Web上の文章に深く関わってきた者として、またWebライティング協会代表として、ここで包括的に解説します。
まとめ(キュレーション)記事問題の「まとめ記事」と言って良いでしょう(笑)

全部で6000文字程度ある長文になりますが、ぜひ最後まで読んで下さい!

次の3点に分けて解説します。

1)経緯
2)問題の本質
3)今後の影響
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1)【経緯】

<キュレーションサイトの非公開化>

DeNAは運営するまとめサイト10個すべてを非公開化しました。
運営形態が違うとして最後まで公開していた「MERRY」も全く問題ないと主張し続けることはできなかったようです。

KDDI子会社のSupershipは、同社が運営するノウハウ共有サイト「nanapi」で、一部記事を順次非公開にしました。
「健康・医療」「美容」「育児・教育」などのカテゴリーの記事を、約1万4000件(サイト全体の約10%)。

サイバーエージェントは、同社バイラルメディア「Spotlight」の記事約10万件のうち、内容に問題がある医療関連の記事数千件を非公開に。
さらに追加でSpotlight記事のうち、登録ライター(一般ユーザー)が投稿した記事6万8000件と、女性メディア「by.S」の登録ライターが投稿した記事2万9000件を非公開にしました。

リクルートの「ギャザリー」も、順次、健康に関連する記事約1万6000本(全体の約4分の1)を非公開に。
さらにリクルートホールディングスは12月9日、同社が運営するアニメ情報サイト「アニプラ」など4メディアの記事をすべて非公開に。
「著作権の侵害の可能性がある」と判断したためという。

非公開にしたのは、同社の新規事業開発部門・Media Technology Lab.が運営する4メディア。
「アニプラ」と、スケジュール管理サービス「調整さん」チームが運営するお出かけ情報メディア「調整さんメディア」、エンタメメディア「Kulture」(カルチャー)、体重記録アプリ「RecStyle」内で配信していた「RecCafe」。
アニプラはサービスそのものも終了。
グループが運営するサービスの記事の実態を調査したところ、著作権侵害の可能性が分かったという。

12月5日に事業説明会を行ったLINEも発表内容を大幅に変更し、キュレーションサイト「NAVER まとめ」についての見解を発表しました。
常時監視体制の構築と法規制・ガイドラインに沿った対応をしてきたため、このタイミングでのコンテンツ精査・非公開はないとした上で、今後のコンテンツ管理体制についてまとめ記事作成者の審査・承認を行うこと、一次情報発信者の権利保護とインセンティブの体制を見直すことを説明。

<クラウドソーシング会社の対応>

クラウドソーシングサービスを手掛けるクラウドワークスとランサーズが、それぞれ仕事依頼に関するガイドラインを更新しました。

両社とも「第三者の知的財産権を侵害するような仕事の依頼を禁止」する旨を明文化。

クラウドワークスは

「第三者の著作権等、知的財産権の侵害あるいは侵害の恐れがある仕事」の項目を明記。
「第三者の記事の一部(語尾や単語、言い回し等)に変更を加える記事作成」
「第三者のブログに掲載されている写真を、必要な許諾を得ずに転用することを含む」

といった具体例を挙げ、該当する依頼を禁じました。

ランサーズも

「第三者の知的財産権の侵害もしくは助長するような仕事」の項目を設け、
「第三者の記事などをコピーして制作するように指示している」
「第三者の記事の一部を書き換えてオリジナルに見せた記事を制作するように指示している」

といった依頼を禁止に。

また、クライアントがライティングおよびリライトに関連する依頼をする際、ガイドラインへの同意を求めるようシステムを変更しています。

2)【問題の本質】

■まず、誰が悪いかと言えば、唯一絶対的に悪いのが、運営会社です。

サイトの制作及び公開はすべて運営者の責任で行っているので当然のことです。
今回問題となった運営会社は、検索数の多いキーワードで上位表示して、たくさんのアクセスを集めることによって、広告料を稼ぐというビジネスモデルを実践していました。

特にWELQはサイト開設6ヶ月600万PVを集めるという驚異的な成果を出したサイトでした。
もし仮にこのサイトがSEO上これほど成功していないか、又は時間をかけてアクセスが稼いできたサイトであれば、これほど問題にならなかったかもしれません。
ただいずれにしろ、明らかにおかしな内容、信憑性の乏しいもの、転用されているなどのクレームを受ける記事が多くあったことは事実で、有名一部上場企業が行うこととしてはお粗末だったと言えます。

■では検索エンジンであるグーグルはどうでしょうか?

結論を言えば、グーグルに責任を問うことはできません。

グーグルは検索エンジンの開発競争で唯一生き残った企業。
他がまねすることができな精度の検索エンジンを開発しました。
しかも、ここ数年の精度の向上も目を見張るものがあります。

ただし、もちろん完全ではありません。
内容のウソが疑義のあるものを見抜くことはできません。
今回問題のある記事を見抜くことが出来なかったからといって、グーグルの責任にしても何の意味もありません。
グーグルの代替はないのですから。

しかもWELQの記事が上位表示するべきではなく、それ以外の記事が上位表示するべきかどうかが明確ではありません。
もしかするとWELQの記事より他の記事の方が問題があるかもしれません。
つまりしっかり検証してみれば、もしかするとグーグルは正しい判断をしていた可能性もあるのです。

他のサイトの中には、日本語の関連記事さえあれば良いとするもの、日本語だけど何を言いたいのか理解不能な記事、機械の自動生成による意味不明な文章(ワードサラダ)などで、構成されているものすらあるのです。

WELQの記事の多くは8000文字もあるほどの長文。
それを画像を適度に入れるレイアウトと文字によって読みやすく構成されていました。
非常に網羅的で詳しかったのも事実。
質の低い薄い記事もあったにせよ、内容の多くは、役立つものだったことも指摘しておかなくてはなりません。

■次にクラウドソーシング会社はどうでしょうか?

WELQの記事の90%がランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシング会社で募集したライターが書いたものとのこと。
他のキュレーションサイトの大部分もそうだったと予想されます。
規模が大きくなればなるほど、たくさんのライターが必要になるため、クラウドソーシング会社に頼らざるを得なくなります。

クラウドソーシング会社は基本的に、運営者とライターをつなぐ役目。
ですから、そこで行われている細かい内容までタッチしないのが普通です。

これが明らかな法律違反や公序良俗に反することが行われているということであれば、責任が問われてもおかしくありません。
しかし、今回の問題で直接の責任を問うのは難しいでしょう。
世の中の基準や空気が一気に変わったという事情もあります。

ただし、結果的にこれによってお金を儲けていたわけですから、道義的な責任はあります。
今回の問題を契機に、同様のことが起こらないような監視体制や規約の整備などが必要になります。

■次にライターはどうでしょうか?

基本的にライターに責任を問うことはできないでしょう。
クライアントの依頼に基づいて書いたものであり、明らかに法的又は倫理的におかしなことであれば別ですが、通常はわからないはずです。
しかも時給の最低賃金以下の安い報酬で作成したものということを考えると、加害者というよりは被害者に近いでしょう。

■今回のように大きな問題になればなるほど関わったみんなが加害者という話になりがちです。

あいつもダメ、こいつもダメと言うのはたやすいし、気持ちが良いのかもしれませんが、それでは、真の加害者が見えにくくなります。

悪いのは明らかに運営会社なのです。
DeNAが他がやらないほどのヒドイことをしたかというと、そうではないのですが、中小会社の一部がやっている倫理的に疑義のあることを、そのまま大手が大がかりにやったことがいけないのです。

DeNAの執行役員であり、キュレーションサイトの総責任者の村田マリ氏は、もともと自身の運営していたサイトをDeNAに売却した人物。
その成功した手法をDeNAでも継続したのです。
DeNAは、たった2年で10のキュレーションサイトを運営することになったことを考えても、急成長を急ぎすぎて、会社の信用や社会への影響が見えなくなってしまったといえるでしょう。

3)【今後の影響】

<サイト運営者>

サイト運営者は、サイトで公開された内容の全ての責任を負います。
それは今までもそうでしたが、これからより重い責任がかかってくると言って良いでしょう。
ホームページやオウンドメディアでは、ほとんどの場合、運営者情報を掲載しているはずです。
もし記事内容に、間違い、ウソ、転用などがある場合、クレームが来ることになりますし、それが多い場合は、閉鎖をせざるをえなくなる可能性があります。

直接クレームしてくるだけならまだ良いかもしれません。
「WELQ」の時のように、記事内容の問題をメディアに掲載されて、炎上してしまったら最悪です。

このようなことから大手のサイトの質は間違いなく向上することでしょう。

では、中小企業ののサイトはどうか?

私は特に法律的な問題がなければ、基本的に継続されると思います。
クレームが来ても、問題がある場合は、非公開或いは書き直しなどをすることになるでしょう。

しかし、中小の場合、大手と比べて、その事業への依存度が高いものです。
しかも会社の評判にそれほど神経を尖らせていないことから考えると対応は違うと予想します。

つまり、今回非公開化されたような記事は、今後も存在し続けることでしょう。

<ライター>


ライターとしては、今後運営者からのチェックが厳しくなります。
その際、同じ単価でやっていたら、割が合わなくなる場合があるでしょう。

そういう意味では一般のライターには厳しい時代になったと言えます。
しかも今まで書いて公開された記事の信憑性はどうなんだ、というモラル上の問題はいつまでもついてまわります。

しかし、それは一般ライターの話で、逆に優秀なライターには今まで以上に多くの仕事の依頼が来るに違いありません。

運営者の立場から言えば、記事内容のすべてを確認して、適切かどうかを判断するのは難しいこと。
その点、優秀で信頼できるライターであれば、心配も手間も要らなくなります。
ですから、これからは安く請け負う一般ライターと優秀ライターの単価の差は広がることになるでしょう。

これまでのキュレーションサイトの相場は1文字0.5~0.8円と報道されていますが、実態は違います。

私も何度か作成の依頼をもらったので、知っていますが、実際には、調べる時間が必要なうえ、記事の書き方やSEO的なレギュレーションが厳しかったり、記事の合う画像を探して提出するなどの作業があるため、実質は1文字0.3円程度。

つまり、一般的なアフィリエイト記事を作成するのと変わりありません。
時給にすると能力にもよりますが400~600円といったところ。

クラウドワークス社が2016年2月に公開した資料によると、2015年12月末時点のユーザー数は79.5万人。
その中で平均月収20万円以上を達成したユーザーは、111人だけ。
これは全ユーザーの約0.014%。

しかもその大部分の職種が「ITエンジニア」か「web制作」であり、「ライター」はわずか3.6%。

月収20万円ということは、月160時間労働として考えると、時給換算すると1250円。
つまり「相場」の3倍もらうか、セールスレターを書く「コピーライター」になるなどが必要になります。

もしあなたが一般ライターならば、今すぐに優秀ライターになるべく研鑽を積んで下さい!!

<クラウドソーシング会社>

ランサーズやクラウドワークスがそろってガイドラインの更新を発表しました。
今後、同様の記事が乱造されることを彼ら自体が防がなくてはなりません。
DeNAに限らず、多くのキュレーションサイトの記事作成は、彼らの大きな利益源だったはず。
これらが少なとも一時的には減ることになるので、業績にも影響があることが予想されます。
しかし、ここは特に彼らのような大手は襟を正して検索ユーザーが喜ぶコンテンツの供給に注力するべき。

彼らの儲けを支えている1つの要因は、ライターが「奴隷労働」とも言える安い報酬で働いていること。
今後は、ライターのスキルの向上と報酬の向上が必要不可欠です。

質の高い記事を書いてもらうのは、それだけコストがかかることを顧客に納得してもらわなくてはなりません。
現在の相場の2~3倍必要でしょう。

<検索エンジンが良くなるのか?>

結論から言えば検索エンジンの質は少しは良くなるでしょう。

まず間違いなく言えるのが、以上挙げたような大手のサイトの質は向上するということ。
しかも、グーグルは常に改善されており、情報の真偽まで正確には読み取れないものの、ユーザー行動や反応で、ある程度は理解できるようになる可能性があります。

では劇的に変わるかといえば否。

検索エンジンの上位に掲載されているサイトの情報が全て信頼できるようになるのは、遠い未来、いやその日が来るようになるかさえわかりません。
だからこそ、ユーザー自身が賢くならなくてはなりません。

<あなた(一般ユーザー)が行うべき対応>

一般ユーザーには、キュレーションサイトの実態や検索エンジンの現実を知るために今回の問題は良い機会になりました。

「大手が発信している情報だから正しいだろう」
ではいけません!
「検索エンジンで1位だから信用できる」
も違います!

どんな情報にも正しい、間違っている以外に、その間の強弱、ニュアンスの違いや人によって受け止め方が違う場合など判断の難しい場合があります。
文章を評価するのはそこが難しいところ。
人が判断するのも難しいのに、検索エンジンが判断するのを期待してはいけません。

文章の信憑性を判断するのは次のことを留意してください。

●どういう立場の人が書いたものか

⇒なるべく中立的な立場の専門家の文章を読む。
そうでない場合は、差し引いて考える。

●記事のベースとなる引用、参考などの基本情報に間違いがないか

⇒もっともなことを書いているようで実は前提が間違っている場合がある。
どこから引っ張ってきた基本情報かも含めて判断する。

●○○だから○○の論理に矛盾がないか

⇒筆者が導きたい結論にするため或いは誤解のため、
矛盾した論理展開になっている場合がある。
鵜呑みにしないように、自分でも考えながら読む。

●他に信頼できそうな情報がないか

⇒なるべく複数の情報に接して、総合的に判断する。
どんな場合でも立場の違う人の情報も参考にする。

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